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会社からまっすぐ帰宅しない「フラリーマン」、精神科医はその心理についてどう考えるか

精神科医・水島広子先生に聞く、なぜフラリーマンは生まれてしまうのか?

 今は夫婦それぞれに個室を持っているという家庭も多いので、家庭内に一人になれる場所があれば、フラリーマンにならずに済むのかもしれない。でも実際は、子どもはおかまいなしで部屋に入ってくるから一人になんてなれないし、子どもが小さい頃に夫婦それぞれに自分の部屋が持てるほど経済的余裕がある人も多くない。そしてフラリーマンが立ち寄る場所自体も、少ない小遣いの範囲で行けるようなところに限られてくる。逃げ場のない夫(あるいは妻)の立場を思うと、相手のためにできることはあるのだろうか。
「家に帰りたくなるような、とまではいかなくても、せめて逃げ出したくならないくらいの雰囲気作りができたらいいですよね。例えば夫に対して妻が“今週は早く帰ってきてね”と伝えるにしても、“全くいつも遅いんだから! たまには早く帰って来なさいよ!”という言い方をするんじゃなくて、“やっぱりパパがいるときのほうが子どもは食べる量が多いのよね”など、優しい言い方で(笑)。夫婦は、お互いの心理を理解しようとすることが大事なのです。フラリーマンのように、一見家庭に協力的じゃないと思える行いが一体どこからくるのか、一度夫(あるいは妻)に聞いてあげてもいいんじゃないでしょうか」

 

■妻が家にいて当然だ、と思うのは間違い

 夫は夫で口下手だから“妻に理解してもらおう”という熱意や言葉が足りないのも事実。何も言わずにフラリーマン的行動をとっているから、「あなただけ自由でいいわね」と、妻の側から取られてしまうことは大いにありうる。
「お互いの言い分はありますよね。その場合は、一定時間のフリータイムを交代制で作るのはどうでしょう。自分の要望だけを認めてくれと言うと、妻に余計責められるので“たまには息抜きしたいでしょ。今から1時間くらい、どこかでお茶して来たら?”と言ってみてください。そうすると、妻はだんだん身支度を整えてお茶に出かける行為が面倒臭く思えてきて、“今日はいいや”となってくるんですよ。女性は家志向が強いので、どこかに行ってお茶を飲むよりも家でのんびりしていた方がいい、と思うようになる。でも夫側は、一定時間打ちっ放しに行って自分の時間を持つ。それでいいんです。夫から“息抜きしてきたら?”と、一言言われたというのが妻にとっては嬉しいこと。“お前は家にいて当然だ”という雰囲気とは全然違いますよね」

 夫婦間で声掛けをすることで、お互いに家庭内に気持ちの逃げ場を作る必要があるのかもしれない。

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水島 広子

みずしま ひろこ

精神科医、対人関係療法専門クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、二〇〇〇~〇五年衆議院議員を務め、児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。著書に『トラウマの現実に向き合う』『女子の人間関係』など多数。


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  • 広子, 水島
  • 2011.12.22